【UE5】2Dアニメーションを利用する時のPaperZDとSpriteStudioの比較

はじめに

プログラマーの村上です。

最近Unreal Engineで2Dアニメーションを扱うプロジェクトに関わり、PaperZDSpriteStudioを使用する機会があったので、この2つのツールの機能を比較して紹介したいと思います。

PaperZD/Paper2Dとは?

Paper2Dとは、Unreal Engineに標準搭載されている2Dゲーム開発用フレームワークです。Paper2D公式ドキュメント→Paper2D

PaperZDは、そのPaper2Dのサードパーティ製拡張プラグインです。

主に、公式のPaper2Dでは使えなかったアニメーションブループリントを使用することができるようになっており、UEの3Dアニメーションと同じようなワークフローで2Dアニメーションを作成・管理できるようになっています。

SpriteStudioとは?

SpriteStudioは、WebTechnology が開発している日本製の2Dアニメーション制作専用ツールです。

SpriteStudio自体は外部ツールであり、専用プラグインを導入することで Unreal Engine 内で再生・制御できるようになります。

このプラグインはPaper2Dを内部的に使用せずに描画しているため、Paper2D/ZDとの併用は難しくなっています。

Information

※厳密に言うとSpriteStudioはデザイナ向けツールのため、アニメーション制作の部分だけSpriteStudioで行いPaperZDで描画することも出来なくはないのですが、PaperZD用のFlipbookに変換しなくてはいけないのでSpriteStudio内特有の設定の殆どは使用できません。

ただ、2Dアニメーション制作に特化しており、日本のゲーム開発現場で広く使われているツールです。

どちらを使うべきか?

実際に、この2つのツールを使った結論としては、

  • 全体的にアクションの状態とアニメーションの少ないゲーム、またプロト作成段階であれば、Flipbookのみで十分
  • アクション性の高いゲームや見下ろし式でアニメーション数の少ないゲームPaperZD(プログラマ向き)
  • キャラ毎のパーツが多いゲームアニメーション数の多いゲームグラフィック重視のゲームSpriteStudio(デザイナ向き)

となります。

この理由について、各ツールのメリットを紹介しながら説明したいと思います。

PaperZDのメリット

PaperZDは、Unrealエディタとの連携やBlueprintからの柔軟な制御、AnimationSequenceとの連携、また機能の拡張性といったことが主なメリットになっています。

3DのAnimBPに似たPaperZD用のAnimBPが使える。

・ステートマシンが使えるので状態変化に強い

 →Idle → Walk → Run → Attack のような複雑な遷移を、3Dアニメと同じフローで管理できる。

・アニメーションブレンドができる

 →移動速度による滑らかなモーション補間や、方向転換時のブレンドなどが可能。

・3Dアニメ制作フローに慣れている人なら、ほぼそのままの感覚で使える。

 →全く同じではないが、UEの3Dアニメ―ション用のものを模して作られているため、習得コストが低い。

純正のPaper2Dの拡張プラグインのため、BPやC++での制御がしやすい

・Paper2Dと同じアセット構造(Sprite/Flipbook)を扱えるため、既存のUEの知識がそのまま活かせる。

・Blueprint で扱うノードが UE 標準に近く、扱いやすい設計になっている。

・C++API がUEのアニメーションシステムと似た構造になっており、拡張が容易。

PaperZD用のAnimationSequenceが使える

・アニメーション単位でキーフレーム情報、イベント、方向別データを管理することが出来る

PaperZD用のAnimationNotifyが使えるため、アクション単位でイベント同期がしやすい

 →特にこれが便利で、アクション単位で攻撃判定・エフェクト・効果音等の発生タイミングを制御できるため、AnimationNotifyだけ作ってしまえば修正等もAnimationSeqenceのみで完結する

アニメーションの方向(4方向や8方向等)を一つのアセットにまとめて管理してくれる

・AnimationSequence内に複数方向のアニメをまとめて格納できるため、アセット管理が非常にシンプルになる。(画像右側が方向管理)

UE内でアニメーションを編集できる

・UE内で完結しているため、他ソフトウェアを開く必要がない

 →AnimationSequenceエディタさえ開けば殆どの編集をUE上で行うことが出来る

SpriteStudioのメリット

SpriteStudioを使うメリットとしては、SpriteStudioのエディタの完成度の高さです。

PaperZDでは、Unrealエディタ内での拡張が大きなメリットでしたが、SpriteStudoの場合はUnrealエディタを使わずにアニメーションデータを作り込んでいくことが可能です。

SpriteStudioソフト単体でアニメーションを作成、管理できる

・アニメーション制作がすべてSpriteStudio 内で完結するため、デザイナーがUnreal Engineを触る必要がほぼなくなる。

 →アーティストとプログラマーの作業領域を明確に分けることが出来るのは衝突が起きにくくなり、大きなメリット。
・PaperZDでは、アニメーションを編集するとき複数のアセットをロックすることになりやすいですが、SpriteStudioでは基本的に *.ssae ファイルのみのロックで済む。

 →PaperZDでは、Flipbook,Sprite,AnimationSequence全てを編集する必要がありますが、SpriteStudioでは外部ツールで出力して変更するものは基本的に*.ssae ファイルのみなので、バージョン管理ソフトでのロック競合が少なくて済む。

(※アニメーション素材は「ぴぽや様 (クリスタルアニメ素材)」よりお借りしました)

タイムライン編集による高品質なアニメーション制作ができる

・SpriteStudio はタイムライン(時間軸)ベースでアニメーションを編集できるため、アニメの質を高く保てる。

・PaperZDのコマ送り方式では表現できない滑らかな動きが実現できる。

 →キーフレームでの操作や、中間の自動補完、カーブ設定など、PaperZDでは再現しづらい演出も簡単に作れる

・キャラクターアニメだけでなく、演出や UI アニメにも強い。

 →タイムライン上で画面エフェクト、フェード、拡大縮小などをまとめて制御できるため、カットインのような一連のアニメーションも作成しやすい

パーツごとの管理がしやすく、アニメーション制作と実装の両面で扱いやすい

・キャラクターをパーツ単位(頭・腕・足・武器・装飾など)で管理できるため、差分対応が非常に簡単。

 →実装側でパーツ変更を行えるため、パーツ差し替えのみですべてのアニメーションを変更可能。

・パーツごとの情報の取得やパーツの座標の設定、取得がやりやすいためスプライトの座標を用いた実装がしやすい(PaperZDでもスプライトごとの座標は設定できるがかなり面倒)

アニメーションの修正コストが低い

・SpriteStudioはキーフレームやパーツ単位でアニメを管理しているため、修正が発生しても必要な部分だけを手直しできる。

 →コマ送り方式だと、画像自体を作り直す必要がある

・キャラクターの仕様変更にも柔軟に対応できる。

・複数アニメに同じ部品が使われている場合、パーツの差し替えだけで全アニメに反映される。

データ管理数が少ない/データサイズが小さい

・PaperZDでは部位ごとにFlipbook化する必要があったが、SpriteStudio はセルマップと、*.ssae(アニメセット)単位でデータがまとまるため、プロジェクト全体のデータ量が非常にコンパクト。

・修正数も少なくなるため、データ更新のコストが低い。

 →パーツ差し替え・アニメ修正・パラメータ調整が、*.ssae 内に完結しているため、必要な更新が最小限ですむ。

・プロジェクトサイズが膨らみにくいので、ビルド時間やリポジトリ管理も楽。

まとめ

PaperZDとSpriteStudioの比較でした。

まとめとしては、PaperZD(FlipBook)は Unreal Engineの機能を活用して Unrealエディタ上でデータを作り込みたい場合におすすめです。

特に、AnimationSequenceとAnimationBlueprintが使えるのは大きいです。

SpriteStudioはツール上でアニメーションを作り込んで、リッチな2Dグラフィックのゲームを作りたい場合におすすめです。

パーツ差分の多いゲームはPaperZDのみでは難しいため、SpriteStudio等のプラグイン、ツールを使用してみてください。

以上、Unreal Engineで2Dアニメーションを使うゲームを開発する際の参考になれば嬉しいです。

おまけ・他プラグイン

Paper2D・PaperZD・SpriteStudioのほかにも、Unreal Engineで利用できる 2D アニメーション系プラグインはいくつか存在します。

例としていくつか紹介します。

Odyssey

UE5向けの2Dアニメーションシステム。Meshベースの2Dアニメーションで、Unreal Editor内で直接、フレーム単位の作画、アニメーション、絵コンテ制作を可能にしているそうです。

みたところPaperZDよりも本格的なアニメーションをUE内で作成できるようなので、PaperZDのようにUE内でアニメーションを製作し、外部ツールに頼りたくない場合はこちらを使ってみてもよさそうです。最近個人利用での使用が無料化しました。

Spine

海外で最も使われている 2Dスケルトンアニメツール。Unityではよく使われていますが、UE用のランタイムもあるそうです。

ボーンアニメーションが強力で、ボーンを使用したアニメーションを作成する場合にはおすすめです。

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