【UE5】UE5.7のロードマップの気になる機能まとめ
今回はUE5.7のロードマップ (実装が予定されている新機能) が公開されたので、気になった機能を一部分ですがまとめてみます。
MegaLights (Beta)
数千の大量のライトを配置できる「MegaLight」がベータとなり実用段階に入ったとのことです。

(画像はロードマップから引用)
簡単に従来のライトとMegaLightsの機能を比較すると以下のとおりです。
項目 | 従来のライト処理 (Deferred / Forward+) | MegaLights (UE5.7 Beta) |
---|---|---|
同時に扱えるライト数 | パフォーマンス的に数十〜数百が限界 | 数千 (将来的には数万以上を目指す) |
ノイズ | 基本的になし | 多数のライトをモンテカルロサンプリング的に扱うためノイズが発生。Alphaでは多かったが、Betaで大幅改善 |
パフォーマンス スケーリング | ライト数が増えると急激に重くなる | ライト数が増えてもGPU側で効率的に処理できる |
対応範囲 | 別シェーダーパスで処理が必要な場合がある | 5.7 Betaで Directional / Particle / Translucency / Hair に対応 |
用途 | 多数の配置は制限的。最適化が必須 | 「無数のライトを置ける」表現が可能となる |
UE5.7 MegaLights (Beta) では、以下の改善点が明記されています。
- ノイズの削減:サンプリング不足によるライトのノイズを減らし、クリーンな結果が得られるようになった
- パフォーマンスの改善:GPU負荷の分散処理の最適化により、高いフレームレートで多数のライトを処理可能になった
- さらなるレンダリング統合がされた:Directional (平行光源)、Niagara、半透明オブジェクト、Hair Strands (毛髪) にも対応した
Substrate (Material) が "Production Ready" に
Substrate は、UE5.7からProduction Ready (安定版) となるとのことです。(UE5.6までは Beta版でした)

(画像はロードマップから引用)
Substrateとは
Substrateの特徴として「シェーディングモデルに縛られず、より自由なマテリアル作成、映画品質を目指す新しいマテリアルオーサリングシステム」ということが以下の資料で紹介されています。
これを詳しく説明すると、UEの従来のシェーディングは特定モデルを選択すると、その選択に依存していました。(固定的シェーディングモデル)
以下はUEのシェーディングモデルの一例です。
- Default Lit(基本の PBR: Lambert + Cook-Torrance など)
- Clear Coat(クリア層が追加された専用モデル)
- Hair(髪専用の特殊シェーダ)
- Cloth、Subsurface、Eye など

今までは、ここから例えば "Clear Coat" を選ぶと Opaque 専用となり 半透明モード (Translucent) を組み合わせられなかったです。(正確には選べるだけで実際には機能しない)

そこで、Substrate を使うことで、Slab (層) を重ねるように複雑なマテリアルを構成可能となったというわけですね。
Motion MatchingがChooserシステムに統合 (Experimental)
Motion Matching とは、キャラクターアニメーションの切り替え方法の1つです。
切り替え方法 | 説明 |
---|---|
ステートマシン (StateMaching) | アクションの状態遷移に合わせて再生するモーションを変更する |
ブレンドスペース (BlendSpace) | モーションを選択してブレンド比率によってモーションを合成する |
Motion Matching | キャラクターの動きに合わせて、モーションデータベースから動的に選択して適用する |
「ステートマシン」「ブレンドスペース」が決まったルールからモーションを適用するのに対して、動きやその意図が持つ情報(位置、速度、回転、軌跡、タグ情報など)から動的に適切なモーションを選ぶ (フレーム単位で継続的に選択する) のが Motion Maching の特徴です。
また、Chooserとは、UE5から導入された条件分岐ベースのアセット選択システムです。例えば「キャラクターの武器が剣なら剣攻撃モーション、銃なら射撃モーション」という分岐を Chooserノードの中で条件式として設定できます。
Motion Maching が Chooserノードに統合された意味としては、Motion Matching が選んだ「候補のポーズ・アニメーション」に対して、さらに Chooser の条件分岐をかけられる、という二段構えの構成により、さらにモーション制御が柔軟に制御できるようになった、ということとなります。

プロシージャルコンテンツ生成が "Production Ready" に
UE5.7で Procedural Content Generation (PCG) Framework が正式に Production Ready (製品版でも安定して利用可能) となる予定とのことです。
UE5.2~5.6までは、Experimental (実験的) であったため、以下の注意点がありました。
- バージョン間で挙動が変わる可能性が多いので本番プロジェクトには含めるには注意が必要
- オフラインでベイクして使う、実験的なプロトタイピングでの利用に留めるのが良い
ですがProduction Readyになったことで、長期運用を前提に使えるようになり、ランタイムでの動的コンテンツ生成がサポートされたこととなります。
さらに UE5.7では、新しい PCG 専用エディタツールモード (PCG Editor Mode) が追加され、スプライン描画、ペイント、ボリューム作成など、PCG フレームワークを活用したカスタマイズ可能なツールライブラリを提供されるとのことです。
また Experimental (実験段階) ですが、プロシージャル植物生成エディタ (Procedural Vegetation Editor) が追加され、Nanite Foliage をサポートする植生メッシュを Unreal Engine 内で直接作成・編集できるようです。

(画像はロードマップから引用)
Chaos Hair
UEの髪表現システムには "Groom System" がすでにありますが、UE5.7 では新たに "Chaos Hair" が導入されるようです。

(画像はロードマップから引用)
"Groom System" では、Chaos Cloth や Niagara を流用したものであったため、高負荷で制御も限定的、物理シミュレーションとアニメーションのブレンドができない、といった問題がありました。
そこでUE5.7 で導入する「Chaos Hair」は、これらの課題を解決するための新しい専用ソルバで、アニメーションと物理のブレンドが可能、ガイドスプラインによる制御、ペイント編集が可能となり、より柔軟でリアルな髪表現を可能にしているとのことです。
AI Assistant (Experimental)
UE5.7 の AI Assistant (実験機能) は、Unreal Engine のエディタ内で直接 AI に質問したり、コード例を生成したりできる仕組みです。

(画像はロードマップから引用)
ただ現状の予定は「エディタに統合された ChatGPT 的なヘルプウィンドウ」にとどまり、 自動化エージェント的な機能 は実装されないようです。
- ❌ Blueprint のグラフを自動生成・配置: ノードを直接配置したり、ピンを接続したりはできず、コード例として Blueprint ノードの擬似コードやサンプルを提示するのみ
- ❌ マテリアルノードの自動生成: 実際のエディタ上にノードネットワークを構築する機能はなし。ノードの組み合わせ例や解説の情報をまとめるのは可能
- ❌ 作業の自動化 (Agent 的挙動): UE エディタ内でプロジェクトを横断的に操作するような「自律エージェント」機能は未実装 (例:フォルダ整理、アセット自動リネーム、プラグイン有効化などを勝手に実行することはできない)
とはいえ現状は「実験段階」ということもあり、今後の機能拡張に期待ですね。